清涼飲料 コロナ禍で自販機中心に大打撃
2020年上半期( 1~6 月)の飲料市場の生産量は,前年同期比9 %減と昨年を大きく下回った。新型コロナウイルス感染症の広がりにより外出が自粛され,自販機の稼働がストップしたことでマイナス幅を大きく広げ,人出が制限されたためコンビニや外食(業務用),オフィス自販機, 行楽地の売れ行きも昨年を大きく割り込んだ。 4 月に発令された緊急事態宣言は 5月25日に約 7 週間ぶりに解除され,少しずつだが需要は戻りつつあるものの平常時とは雲泥の差。期待された大型連休も観光地の人出はまばらで, 7月は記録的な長梅雨や集中豪雨が追い打ちをかけ,業界は最悪の事態を招いた。一方,外出自粛に伴い家庭内での巣ごもり需要は増加。緊急事態宣言が発令されるとスーパーやドラッグストアにはまとめ買いする消費者があふれ,大型 PET のミネラルウォーターや乳酸菌飲料,機能性飲料,濃縮飲料などをケース買いするケースも多かった。
「With コロナ」に突入し健康価値の再認識進む
コロナ感染は長期化することは間違いなく,コロナと共生する「Withコロナ」時代の中で,企業には難しし取りを舵取りを迫られている。夏場商戦ではすべての手を打ち,結果を待っばかりだが,企業は既に秋冬商戦,更には「アフターコロナ」の対応を急いでいる。今後は健康に対する関心が一層高まるため,機能や健康的な価値が再認識されるとみる向きが多い。トクホや機能性表示食品のほか豆乳や野菜飲料,青汁, 乳酸菌飲料などが見直されると予測。自己防衛意識が高まり,栄養バランスの良い野菜飲料は上半期で存在感を発揮し, 特に家庭内需要の増加により大型サイズの PETや紙パックが伸びた。粉末により通販チャネルを中心に伸びてきた青汁は,秋冬からドリンク青汁をスーパーなど店頭で攻勢をかけるという動きもある。上半期堅調だった豆乳は通期でも無調整豆乳を中心にプラスが見込まれている。コロナにより体調管理への関心の高まる中で乳酸菌飲料が期待されており,直近では飲料会社が発売する常温タイプが,乳業会社が発売するチルドタイプを上回ったというデータもある。秋冬商戦のメインとなるコーヒーや紅茶,茶系飲料は,無糖をベースにカフエインやポリフエノール,カテキンなどのエビデンスが照準になるとみられ,家庭内消費の増加によりスーパーや総合スーパーでの大型PET飲料が中心となりそう。ビタミンやカルシウム,タンパク質などに特化した飲料も新たな健康軸を構成する可能性も出てきた。
自販機チャネルの立て直しが最大のテーマ
チャネル別では,自販機チャネルの立て直しが大きなテーマだろう。スーパーやコンビニと共に飲料市場の基盤をなしてきただけに,自販機チャネルが回復しないかぎり飲料の復活はない。依然として外出自粛が続く中で,特定の自販機のパーマシンをいかに引き上げるかという難しい課題に迫られている。一方,飲料業界の関心が低かったネット通販も見直されそうだ。コカ・コーラは,ラベルレス製品を Amazon や楽天市場,Yahoo !ショッピングなどのネット通販チャネルによりオンラインで限定販売する計画で,他社も含め新たな動きとして注目される。(井上拓郎)
引用元:缶詰研究会月刊誌:食品と容器